ふれあいペアレントプログラム(ふれペア)とは?

ふれあいペアレントプログラム(ふれペア)とは?

先日、映画『平行と垂直』を観ました。

この映画は、自閉スペクトラム症の兄・大貴と、幼いころから兄を支えてきた妹・希の物語です。
大貴は周囲の支援を受けながら働き、地域で生活しています。一方、妹の希は、兄を支えることを自分の人生の一部として生きてきました。希の結婚をきっかけに、それぞれがこれからどのように生きていくのかが描かれています。

映画を観ながら、私は改めて考えました。
障害のある本人の幸せだけを考えれば、それで十分なのだろうか。

本人を支えるお父さんやお母さん、そして、きょうだいにも、それぞれの人生があります。
療育を考えるとき、私たちは子どもの「できること」だけではなく、本人と家族のQOL(生活の質)を一緒に考える必要があると思っています。

子どものためだけに、家族の人生があるわけではない

発達が気になる子どもを育てていると、

「もっと家で練習したほうがいいのかな」
「私の関わり方が悪いのかな」
「この子のために、もっと頑張らないと」

そんな気持ちになることがあるかもしれません。

もちろん、家庭での関わりは子どもの発達にとって大切です。
でも、だからといって、お父さんやお母さんが一日中「先生」になる必要はありません。

親には、親自身の生活があります。
仕事をする時間もあります。
休む時間も必要です。
趣味を楽しむ時間や、夫婦で過ごす時間、きょうだいと過ごす時間も大切です。

そして何より、

お父さんやお母さんは、子どもの「療育者」である前に、その子のお父さん、お母さんです。
結いの虹では、子どもの発達を支えることと同じくらい、家族が無理なく暮らしていけることを大切にしたいと考えています。

そこで知ってほしい「ふれあいペアレントプログラム」

その考え方につながる親支援の一つが、

ふれあいペアレントプログラム(愛称:ふれペア)

です。

ふれペアは、社会的コミュニケーションの発達が気になる、おおむね1歳から4歳の子どもの保護者を対象にした親支援プログラムです。
子どもの発達を理解し、その子の発達に合った関わり方を保護者が学びます。

大切にしているのは、子どもに何かを繰り返し「訓練する」ことではありません。
日常生活や遊びの中で、

「楽しいね」
「見てくれた!」
「笑ってくれた!」
「やりとりできた!」

という親子の小さなふれあいを増やしていくことです。

ふれペアで学ぶ「社会的コミュニケーション」とは?

社会的コミュニケーションという言葉は、少し難しく感じるかもしれません。
簡単にいうと、

「人と気持ちや楽しさを分かち合いながら、やりとりする力」

です。

例えば、

子どもが好きなおもちゃを見ている。
その横で大人も同じおもちゃを見る。
子どもが大人を見る。
大人が笑う。
子どもも笑う。

そんな小さなやりとりも、社会的コミュニケーションです。

言葉だけがコミュニケーションではありません。
表情、視線、動き、声、身ぶりなども大切なコミュニケーションです。

ふれペアでは、このような子どもの小さな発信に気づき、親子のやりとりにつなげていく方法を学びます。

「子どもを変える」前に、子どものことを知る

ふれペアの特徴の一つが、

まず子どもの発達を知ることから始める

という点です。

例えば、一人遊びが多い子どもを見て、

「一緒に遊んでくれない」

と思うことがあります。

でも、その子は大人を嫌がっているわけではないかもしれません。
まだ、人と一緒に遊ぶ楽しさに気づいていないのかもしれません。
そう考えると、大人の関わり方も変わります。

無理に「こっちを見て」と言うのではなく、

子どもが楽しんでいる遊びの中に、少しだけ入ってみる。
子どもの動きをまねしてみる。
同じものを見てみる。
子どもがこちらを見たら、笑顔で応える。

そんなところから始めることができます。

子どもを大人のやり方に合わせるのではなく、
大人が子どもの発達や興味を理解して、関わり方を工夫する。

これは結いの虹でも、とても大切にしている考え方です。

【個別療育センター結いの虹 支援プログラム】

ふれペアでは何をするの?

NPO法人ふれあいペアレントプログラム協会が示している標準的な6回プログラムでは、次の内容を順番に学びます。

①社会的コミュニケーションの発達を知る
②コミュニケーションの方法を学ぶ
③子どもへの関わり方を知る
④やりとりを続ける工夫を学ぶ
⑤親子のふれあい遊びを学ぶ
⑥それぞれの家庭に合った親子遊びを考える

標準的な実施方法では、保護者4~6名程度の少人数グループで、週1回、1回90分、全6回で行われます。
毎回、

学ぶ → 保護者同士で話す → 家でやってみる

という流れを繰り返します。

ここで大切なのは、家庭で「宿題を完璧にこなす」ことではありません。
やってみて、

「これはうまくいった」
「これは難しかった」
「うちの子はこんな反応だった」

という経験を持ち寄ります。
そこから、またその子に合った方法を一緒に考えていきます。

親の子育てを評価する場所ではありません

「親向けのプログラム」と聞くと、

「自分の育て方を注意されるのでは?」

と不安になる方もいるかもしれません。
でも、ふれペアは保護者の子育てを採点する場所ではありません。

NPO法人ふれあいペアレントプログラム協会も、ファシリテーターを、保護者が肩の力を抜き、子どもとのふれあいを楽しめるようになるための伴走者と位置づけています。

子育てに「正解」を押しつけるのではなく、

「この子の場合はどうだろう?」
「この家庭では、どんなやり方なら続けられるだろう?」

と一緒に考えていきます。

ここは、結いの虹がふれペアを大切にしている理由の一つでもあります。

ふれペアが目指しているのは「親子のwell-being」

ふれペアの公式な目的には、

「子どもの発達の促進」
「親子の関係性の育成」

だけでなく、

「親の自信(エンパワメント)」と「親子のwell-being」

が掲げられています。

well-beingとは、簡単にいうと、

その人らしく、安心して、よりよく生活できている状態

です。

これは、この記事の最初にお話ししたQOLにもつながる考え方です。

子どもの言葉が増えた。
できることが増えた。
もちろん、それも大切です。

でも、

「前より子どもと遊ぶのが楽しくなった」
「この子が何を伝えようとしているのか、少し分かるようになった」
「以前より焦らなくなった」
「子どもと笑い合う時間が増えた」

そんな変化も、とても大切な支援の成果だと思います。

実際、ふれペアに参加したASDのある子どもの母親を対象とした研究では、参加前と比べて、参加後に「心の通い合い」と「愛着行動」の得点が有意に高くなったことが報告されています。もちろん一つの研究だけですべての家庭に同じ効果があるとは言えませんが、親子の関係性を大切にするプログラムであることを示す一つの結果です。

【出典】
自閉スペクトラム症幼児の親への支援のあり方 ふれあいペアレントプログラムによる親への効果 尾崎 康子

親を「家庭の療育者」にすることが目的ではありません

結いの虹では、ふれペアを、

「保護者を家庭の療育者にするためのプログラム」
とは考えていません。

家庭まで療育の時間にしてしまえば、親も子どもも疲れてしまいます。
そうではなく、

いつものお風呂
いつものごはん
いつもの公園
いつものおもちゃ

そんな普通の毎日の中で、

「ちょっと待ってみよう」
「この子の遊びをまねしてみよう」
「今、こちらを見てくれたから笑って返そう」

と、関わり方を少し変えてみる。

その結果、

親子のふれあいが増える
子どものことが少し分かるようになる
子育てが少し楽になる

私たちは、そんな変化を大切にしています。

映画『平行と垂直』から考えた「家族の人生」

映画『平行と垂直』を観て改めて感じたのは、

障害のある人を支えることと、家族が自分の人生を生きることは、どちらか一つを選ぶものではない

ということでした。

「この子のために、親が全部を犠牲にする」

そんな支援を、私たちは目指したくありません。

本人には本人の人生があります。
お父さんには、お父さんの人生があります。
お母さんには、お母さんの人生があります。
きょうだいにも、その人自身の人生があります。

だからこそ、

子どもだけを見るのではなく、

家族という暮らし全体を見る。

それが、本当の意味での家族支援ではないかと思います。
そして、親子がお互いに少し楽になり、毎日の中で笑い合える時間が増えること。

それも療育が目指す大切なものの一つだと、結いの虹は考えています。

結いの虹では、認定ファシリテーターがふれペアを実施しています

個別療育センター結いの虹では、子どもへの個別療育だけでなく、保護者支援にも力を入れています。

その一つとして、NPO法人ふれあいペアレントプログラム協会の養成講座を受講し、認定を受けたファシリテーターが「ふれあいペアレントプログラム」を実施しています。

ふれペアでは、

「言葉がなかなか増えない」
「一人遊びが多い」
「どうやって一緒に遊べばいいのか分からない」
「子どもとやりとりが続かない」

といった悩みについて、子どもの発達を理解しながら、家庭でできる関わり方を一緒に学んでいきます。
子育てを評価するためのプログラムではありません

「この子と、どうすればもっと楽しく関われるだろう?」

そんなことを一緒に考えるためのプログラムです。

【運営会社・保護者支援委員会の紹介】

よくある質問

Q. ふれあいペアレントプログラムとは何ですか?

発達が気になる幼児の保護者が、子どもの社会的コミュニケーションの発達を理解し、日常生活や遊びの中での関わり方を学ぶ親支援プログラムです。愛称は「ふれペア」です。

Q. 何歳くらいの子どもが対象ですか?

標準的には、発達が気になるおおむね1歳~4歳の子どもの保護者が対象です。特に、社会的コミュニケーションの発達が気になるお子さんに適したプログラムです。

Q. 子どもも一緒に参加するのですか?

ふれペアは保護者が学ぶプログラムです。学習会やグループワークで学んだことを家庭で実際の親子の関わりの中で試していきます。

Q. 子どもの行動を直すプログラムですか?

子どもの行動を矯正することを目的としたプログラムではありません。子どもの発達や興味を理解し、自然な生活や遊びの中で親子のやりとりを増やしていくことを大切にしています。

Q. 大阪市でふれペアを受けることはできますか?

個別療育センター結いの虹では、NPO法人ふれあいペアレントプログラム協会の研修を受けた認定ファシリテーターが、ふれあいペアレントプログラムを実施しています。

開催時期や参加方法については、結いの虹までお問い合わせください。→お問い合わせはこちら

子どもも、家族も、自分らしく暮らせるように

療育の目的は、

子どもを「普通」に近づけることではありません。
その子が自分らしく暮らし、人とつながり、できることを増やしていくこと。

そして同時に、

家族も自分たちの人生を大切にしながら、一緒に暮らしていけること。

結いの虹は、そこまで含めて支援していきたいと考えています。
ふれあいペアレントプログラムは、そのための一つの方法です。

「もっと子どものことを理解したい」
「子どもとの遊び方を知りたい」
「毎日の関わりを、もう少し楽しいものにしたい」

そう感じている方は、ぜひ一度、結いの虹までご相談ください。
子どものためだけではなく、親子の毎日が少し豊かになるために。

私たちは、ご家族と一緒に考えていきます。

 

【NPO法人ふれあいペアレントプログラム協会】https://fureaipp.or.jp/program/

代表 奥野伸一

合同会社ファイブエス

代表 奥野伸一

児童発達支援管理責任者。個別療育センター結いの虹を運営。大阪市(住吉区・住之江区・阿倍野区)で発達に特性のある子どもたちへの個別療育に取り組んでいます。TEACCHプログラムやJASPER、インリアル・アプローチなどのエビデンスに基づいた支援を大切にし、子ども一人ひとりの強みを生かした関わりを重視しています。遊びや日常の関わりの中で「伝えたい」「一緒に楽しみたい」という気持ちを育み、親子が自分らしく笑いあえる時間を増やすことを目指しています。

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