
「何度伝えても、同じことを繰り返す」
「遊びを終わるときに、泣いたり怒ったりする」
「どのように声をかければよいのか分からない」
お子さんの行動について、このように悩む保護者の方は少なくありません。
ABAは、お子さんの行動を無理に変えたり、大人の言うことを聞かせたりするための方法ではありません。
行動が起きる理由を考え、お子さんが安心して過ごせる環境や、分かりやすい伝え方を見つけるための考え方です。
この記事では、大阪市で個別療育を行っている「個別療育センター結いの虹」が、ABA療育の基本や家庭での考え方を、できるだけ分かりやすく解説します。
ABAは「Applied Behavior Analysis」の略で、日本語では「応用行動分析」と呼ばれます。
少し難しく聞こえますが、基本的な考え方はシンプルです。
お子さんの行動だけを見るのではなく、
■行動の前に何があったのか
■お子さんは実際に何をしたのか
■行動の後に何が起きたのか
という流れを見ながら、行動の理由を考えます。
例えば、お子さんが遊びを終えるときに泣いたとします。
泣いたことだけを見ると、
「切り替えが苦手」
「わがままを言っている」
と感じるかもしれません。
しかし、行動の前後を丁寧に見ると、
■急に「おしまい」と言われた
■あとどれくらい遊べるか分からなかった
■次に何をするのか分からなかった
■泣いたことで、もう少し遊べることになった
という状況が見えてくることがあります。
この場合、お子さんは困らせようとして泣いているのではなく、
「まだ遊びたい」
「急に終わるのは不安」
「次に何をするか分からない」
という気持ちを、泣くことで伝えているのかもしれません。
ABAでは、このように行動の背景を考え、お子さんがもっと分かりやすい方法で過ごせるように支援します。
ABAについて調べると、
「ご褒美を使って行動させる療育」
「できるまで何度も練習する療育」
という説明を見かけることがあります。
しかし、ABAは一つの決まった訓練方法ではありません。
ABAは、お子さんの行動と周りの環境との関係を考えるための枠組みです。
大切なのは、お子さんだけに変化を求めないことです。
例えば、活動の切り替えが難しい場合には、
■事前に終わりを知らせる
■写真や絵カードで予定を見せる
■「あと1回」と伝える
■次に楽しい活動を用意する
■「まだやりたい」と伝える方法を教える
といった工夫をします。
「泣かないように我慢させる」のではなく、泣かなくても気持ちを伝えられる方法や、安心して切り替えられる環境を考えます。
ABAでよく使われる方法の一つに「ABC分析」があります。
難しい分析ではなく、行動の前後を順番に見ていく方法です。
A:行動の前にあったこと
お子さんが行動する前に、何があったかを確認します。
例えば、
■遊びを終えるように言われた
■難しい課題を出された
■欲しい物が見えていた
■大人が別の人と話していた
■大きな音が聞こえた
などです。
B:お子さんが実際にしたこと
「怒った」「機嫌が悪くなった」ではなく、実際に見えた行動を確認します。
例えば、
■大声を出した
■床に寝転んだ
■おもちゃを投げた
■大人の手を引いた
■その場から離れた
などです。
C:行動の後に起きたこと
行動の後、周りで何が起きたかを確認します。
例えば、
■課題が中止になった
■大人がそばに来た
■欲しい物をもらえた
■もう少し遊べることになった
■静かな場所へ移動できた
などです。
ABC分析は、お子さんを評価したり、問題点を探したりするためのものではありません。
お子さんが行動を通して何を伝えているのかを理解するために行います。
泣く、大声を出す、その場から離れるといった行動が見られても、理由は同じとは限りません。
例えば、泣くという行動には、
■やりたくない
■休みたい
■手伝ってほしい
■欲しい物がある
■大人に気づいてほしい
■次の予定が分からず不安
■音や光がつらい
■眠い、疲れた、体調が悪い
など、さまざまな理由が考えられます。
そのため、
「泣いたら無視する」
「癇癪を起こしても要求を聞かない」
というように、行動だけを見て対応を決めることはおすすめできません。
まずは、お子さんが何に困っているのかを考えることが大切です。
ABAでは「強化」という言葉が使われます。
強化とは、ある行動の後にお子さんにとって良いことが起こり、その行動が増えていくことです。
例えば、お子さんが絵カードを使って「休みたい」と伝えた後に休憩できたとします。
すると、お子さんは、
「絵カードを渡せば、気持ちが伝わる」
と学びます。
その結果、泣いたりその場から逃げたりする代わりに、絵カードで伝えることが増える可能性があります。
強化というと、お菓子やシールなどのご褒美を想像するかもしれません。
しかし、次のような日常の出来事も強化になります。
■「手伝って」と伝えたら助けてもらえた
■指差しをしたら大人が一緒に見てくれた
■「もう一回」と伝えたら遊びが続いた
■着替えが終わったら公園へ行けた
■自分で選んだ遊びを大人と楽しめた
結いの虹では、ご褒美でお子さんを動かすことよりも、「伝えたら分かってもらえた」という自然な成功体験を大切にしています。
ABAの考え方は、生活やコミュニケーション、遊びなど、さまざまな場面で活用できます。
例えば、次のような力を育てるときに役立ちます。
■欲しい物を伝える
■「嫌」「やめたい」と伝える
■手伝いを求める
■自分から休憩する
■手洗いや着替えに取り組む
■活動を切り替える
■順番を待つ
■安全に道路を歩く
■大人や友達と遊ぶ
■学習に取り組む
何を目標にするかは、お子さんによって異なります。
すべてのお子さんに同じ課題を行うのではなく、今の生活で困っていることや、本人と家族が大切にしたいことを考えて目標を決めます。
ABAには、子どもの発達や生活を支えるための研究が多くあります。
一方で、使い方によっては、お子さんに負担をかけてしまうことがあります。
「嫌でも言われたことをする」
「大人の指示には必ず従う」
ことを目標にすると、お子さんが自分の気持ちを伝えにくくなることがあります。
育てたいのは、ただ言うことを聞く力ではありません。
■嫌なことを断る
■分からないと伝える
■助けを求める
■休みたいと伝える
■自分で選ぶ
といった力も、生活していくうえで大切です。
体を揺らす、手を動かす、視線を外すといった行動が、お子さんにとって気持ちを落ち着けるために必要なことがあります。
本人や周囲に危険がなく、生活に大きな支障がない行動まで、「普通に見えないから」という理由でやめさせる必要はありません。
言葉で「嫌」と言えなくても、
■顔を背ける
■手を止める
■その場を離れようとする
■表情が固くなる
■泣く
といった行動で、気持ちを伝えていることがあります。
大人が決めた課題を続けることよりも、お子さんの様子を見ながら、休憩したり方法を変えたりすることが大切です。
結いの虹では、ABAの考え方だけでなく、JASPERという支援方法も取り入れています。
JASPERでは、遊びの中で、
■大人と同じ物を見る
■楽しい気持ちを共有する
■指差しや視線で伝える
■見立て遊びを楽しむ
■自分から相手に働きかける
といった力を育てます。
ABAとJASPERは、まったく別の考え方ではありません。
ABAが「行動と環境の関係を見るための土台」だとすると、JASPERはその考え方を、遊びや人とのやり取りの中で活用する支援方法の一つです。
結いの虹では、大人の質問に答えられることだけでなく、
「見て」
「一緒にやろう」
「もう一回」
「これが好き」
と、お子さんから相手に伝えたくなる気持ちを大切にしています。
大阪市にある個別療育センター結いの虹では、ABAをお子さんの行動をコントロールする技術としては考えていません。
お子さんの行動を見たときには、
「なぜできないのだろう」
ではなく、
「何が分かりにくいのだろう」
「どのような伝え方なら分かりやすいだろう」
「環境を変えることで取り組みやすくならないだろうか」
と考えます。
例えば、手洗いでハンドソープを何度も押してしまうお子さんには、何度も注意するのではなく、「2回押す」という絵を見える場所に置く方法があります。
予定の変更が苦手なお子さんには、口頭で何度も説明するのではなく、写真やカレンダーを使って伝える方法があります。
遊びを終えることが難しいお子さんには、急に終わらせるのではなく、残りの回数を知らせたり、遊びの中で自然な終わり方をつくったりします。
お子さんだけを変えようとするのではなく、大人の関わり方や環境も一緒に見直すことが大切です。
ご家庭でお子さんの行動に困ったときは、すぐに叱ったり、対応方法を決めたりする前に、行動の前後を簡単にメモしてみてください。
| 見るところ | 記録の例 |
| 行動の前 | 動画を終えるように伝えた |
| お子さんの行動 | 大声を出してタブレットを床に置いた |
| 行動の後 | 動画を5分延長した |
一度だけではなく、同じような場面を何回か記録すると、共通点が見つかることがあります。
そのうえで、
■事前に終わりを知らせられないか
■タイマーや絵を使えないか
■「あと少し見たい」と伝える方法を教えられないか
■次の予定を分かりやすくできないか
と考えてみます。
家庭で完璧な分析をする必要はありません。
「どうしてこんなことをするの」と考えるのではなく、「何を伝えようとしているのだろう」と考えることが第一歩です。
ABAは自閉症の子どもだけが受ける療育ですか?
ABAは自閉症のあるお子さんの支援でよく活用されていますが、自閉症だけを対象にしたものではありません。
ことば、生活習慣、学習、コミュニケーション、活動の切り替えなど、さまざまな支援に活用できます。
ABA療育はご褒美を使う療育ですか?
ABAではご褒美を使う場合もありますが、ご褒美を渡すことだけがABAではありません。
「伝えたら分かってもらえた」「自分でできた」「一緒に楽しめた」という経験も、お子さんの行動を育てる大切な結果です。
ABA療育は子どもにとって厳しいですか?
ABAそのものが厳しい療育というわけではありません。
ただし、本人の気持ちを無視して課題を続けたり、大人への従順さを求めたりする支援は、お子さんの負担になる可能性があります。本人が安心して参加できることや、生活の質が良くなることを大切にする必要があります。
癇癪はABA療育でなくなりますか?
癇癪だけをなくそうとするのではなく、癇癪が起きる理由を考えます。
予定が分からない、伝える方法がない、疲れている、刺激がつらいなど、背景にある困りごとに対応することで、結果的に癇癪が減ることがあります。
家庭でもABAを取り入れたほうがよいですか?
家庭で特別な訓練を行う必要はありません。
行動の前後を見る、分かりやすく伝える、本人が伝えたことに応えるといった考え方は、日常生活でも活用できます。
保護者の方が無理なく続けられる方法で取り入れることが大切です。
ABA療育を行っている事業所は、どこを見て選べばよいですか?
ABAという言葉だけで判断するのではなく、実際の支援内容を確認することが大切です。
見学や相談の際には、次の点を確認してみてください。
■子どもの嫌がるサインを尊重しているか
■大人の指示に従うことだけを目標にしていないか
■子どもの好きなことや得意なことを支援に生かしているか
■保護者の話を丁寧に聞いているか
■家庭に過度な課題を求めていないか
■支援の目的や方法を分かりやすく説明してくれるか
大阪市には、ABAや個別療育を掲げる児童発達支援・放課後等デイサービスが複数あります。
ただし、同じABAという言葉を使っていても、支援内容や大切にしている考え方は事業所によって異なります。
個別療育センター結いの虹では、大阪市住吉区、住之江区、阿倍野区に教室を設け、一人ひとりのお子さんに合わせた個別療育を行っています。
ABAだけに偏るのではなく、
■TEACCHプログラム
■JASPER
■インリアルアプローチ
■絵カードなどを使ったコミュニケーション支援
■視覚的に分かりやすい環境づくり
などを組み合わせながら、そのお子さんに合った方法を考えます。
「ことばがなかなか増えない」
「癇癪や切り替えの難しさがある」
「集団療育では落ち着いて参加しにくい」
「大阪市で個別療育を受けられる場所を探している」
という方は、事業所名や療育方法だけでなく、実際にお子さんをどのように理解し、どのような目標を立てているかを確認することをおすすめします。
ABAは、お子さんを大人の思いどおりに変えるための方法ではありません。
行動の前後を見ながら、
■お子さんは何に困っているのか
■何を伝えようとしているのか
■どのような環境なら分かりやすいのか
■どのような伝え方を増やせばよいのか
を考えるための枠組みです。
行動だけを止めるのではなく、お子さんが安心して過ごし、自分の気持ちを伝えられる方法を一緒に探していくことが大切です。
個別療育センター結いの虹では、大阪市の住吉区・住之江区・阿倍野区で、お子さんの困りごとだけでなく、好きなこと、得意なこと、興味を持っていることを大切にした個別療育を行っています。
お子さんを支援に合わせるのではなく、お子さんに合う支援を考える。
それが、結いの虹が大切にしているABAの活用方法です。