• 結いの虹通信

象徴遊びとは?ごっこ遊びが広がらない子への関わり方

「ミニカーを走らせるだけで、ほかの遊びに広がらない」
「おままごとの食材を切るのは好きだけど、人形には食べさせようとしない」
「周りの子はごっこ遊びをしているのに、うちの子は全然しない…」

そんな姿を見ていると、「発達に何か問題があるのかな?」と心配になりますよね。

ですが、ごっこ遊びをしないからといって、すぐに何か問題があるわけではありません。

子どもの遊び方には、その子が「今一番好きなこと」や「理解しやすいと感じていること」がそのまま表れています。

大切なのは、「何ができていないか」を探すことではありません。
まずは「この子は今、どんなことを楽しんでいるのかな?」という視点からスタートしてみましょう。

この記事では、象徴遊びや見立て遊びの基本と、遊びが広がりにくい子へ大人が無理なく関わるコツを分かりやすくお伝えします。

そもそも「象徴遊び」「見立て遊び」「ごっこ遊び」ってどう違う?

少し難しい言葉に感じますが、遊びの発達段階によって呼び方が変わります。

おもちゃを決まった使い方で遊ぶ時期も、とても大切な経験です

ごっこ遊びや見立て遊びをする前には、おもちゃ本来の使い方をくり返して楽しむ時期があります。

■ミニカーをひたすら走らせる
■ボタンを何度も押す
■積み木を高く積む
■食べ物のおもちゃをトントン切る

これらを見て、「ただ走らせているだけ」「切っているだけ」ともったいなく感じる必要はありません。

子どもはこうしたシンプルな繰り返しの中で、

■手や指の動かし方を覚える
■物が動く様子をじっくり観察する
■「こうすればこうなる」という安心感を楽しむ
■おもちゃの扱い方に慣れる

といった、すごく大切な基礎を学んでいます。この経験がしっかりと溜まっていくことで、少しずつ次の遊びへと広がっていきます。

大切なのは、今の遊びを飛ばして、急にむずかしいごっこ遊びをさせないことです。
JASPERでは、子どもが今できている遊びをよく見て、そこから少しだけ遊びを広げることを大切にしています。

ごっこ遊びをしない=自閉症? 心配しすぎなくて大丈夫

自閉スペクトラム症(ASD)の特性をもつお子さんの中には、ごっこ遊びや見立て遊びが少なかったり、決まった遊びを好む傾向が見られることもあります。

ですが、「ごっこ遊びをしないから自閉症だ」と決めつけることはできません。
子どもの遊び方には、たくさんの要素が絡み合っています。

■その子の今の発達段階
■言葉の理解度
■好きな物・興味のある領域
■音や触感などの感覚的な好み
■安心して遊べる環境かどうか

例えば、お世話人形には全く興味がなくても、大好きな電車や恐竜を使ったら喜んでごっこ遊びをする子もいます。
自由に遊べる積み木だと「何をすればいいかわからない」けれど、車と道路のおもちゃなら遊べるという子もいます。

一つの姿だけで判断せず、お子さん全体を温かく見てあげることが大切です。

遊びを広げるコツ:大人が「一段だけ」プラスしてみる

1. 食べ物のおもちゃで遊んでいるとき

子どもが「トントン」と切るのを楽しんでいるなら、まずは隣で大人も同じように切ります。 「トントン、切れたね」と短く声をかけましょう。

ステップ1: 大人が切った食材を、お皿に1つだけのせてみる

ステップ2: お皿にのせられたら、人形の前に置く

ステップ3: 興味を示したら、人形にパクッと「一口だけ」食べさせてみる

最初から「人形にあげてごらん」と指示する必要はありません。大人が楽しそうにやって見せるだけで十分です。

2. ミニカーなどの乗り物で遊んでいるとき

子どもが車を走らせているなら、大人も別の車を持って並走します。

ステップ1: 「ブーン」「止まった!」と short な効果音や言葉をつける

ステップ2: 車に小さな人形を1人だけ乗せてみる

ステップ3: 「おうちへ帰ろう」「ガソリンを入れよう」と小さな出来事を1つだけ加える

走らせる ➔ 人形を乗せる ➔ 目的地へ行く ➔ ガソリンを入れる というように、焦らず少しずつ広げていきます。

関わるときに意識したい3つのポイント

①「テスト」にしない(質問や指示を減らす)

「これは何?」「次はどうするの?」「人形にどうぞして」と問いかけが続くと、遊びが「テスト」のように感じられて子どもが疲れてしまいます。

質問をする代わりに、子どもがしていることをそのまま言葉にしてあげましょう。 「赤い車だね」「速い速い!」「トントン、切れたね」

② 反応を焦らず「待つ」

新しい遊び方を見せたあと、すぐに真似をしなくても大丈夫です。 チラッと見た、少し触った、近くに寄ってきた——それだけでも立派な反応です。

③ 遊びが止まったら元の遊びに戻る

新しい遊びを加えた途端、子どもが離れてしまったり嫌がったりしたときは、「変化が大きすぎた」というサインです。 無理に続けさせず、子どもが安心して楽しめる元の遊び(車を走らせる、切るなど)にサッと戻りましょう。

象徴遊びと言葉の関係

象徴遊びでは、目の前にある物を別の物として使います。
例えば、積み木をケーキにします。

言葉も、音や文字を使って、物や出来事、気持ちを表すものです。
そのため、象徴遊びと言葉の育ちには関係があると考えられています。

例えば、人形に食べさせる遊びでは、

■食べる
■おいしい
■もっと
■おしまい

といった言葉を使いやすくなります。

車の遊びでは、

■行く
■止まる
■速い
■壊れた
■直して

といった言葉を使う場面ができます。
ただし、ごっこ遊びを練習すれば、必ず言葉が増えるということではありません。

言葉、まね、人を見ること、一緒に楽しむこと、遊ぶ力は、おたがいに関係しながら育っていきます。

「発語が少ない子どもへの関わり方」はこちら

家庭では「練習」にしすぎない

家庭で毎日、ごっこ遊びの練習をする必要はありません。
遊びは、本来楽しいものです。
大人が正解を決めてしまうと、遊びではなく勉強や課題のようになってしまいます。
家庭では、次の三つを意識してみてください。

①子どもの遊びに入れてもらう

最初から遊び方を変えようとせず、子どもと同じことをしてみます。

②新しい動きを一つだけ見せる

車に人形を一人だけ乗せる、人形に布をかけるなど、小さな変化にします。

③子どもの反応を待つ

すぐにまねをさせようとせず、子どもが見る、近づく、触るといった反応を待ちます。
子どもが新しい遊びをしなかったとしても、失敗ではありません。
大人が子どもの好きな遊びを知ろうとすることが、大切な関わりになります。

よくある質問

見立て遊びをしないと、発達が遅れているのでしょうか?

見立て遊びをするかどうかだけで、子どもの発達を判断することはできません。
言葉、人とのやりとり、まね、遊び方、生活の様子など、いくつかの姿を合わせて見ることが大切です。

ごっこ遊びをしないと、自閉症なのでしょうか?

ごっこ遊びをしないという理由だけで、自閉スペクトラム症だと判断することはできません。
心配が続く場合は、園の先生や専門の支援機関へ相談しましょう。
遊びだけでなく、言葉の理解や人とのやりとり、生活の中での様子も伝えると、相談しやすくなります。

象徴遊びには、どんなおもちゃがよいですか?

特別なおもちゃでなくても大丈夫です。
例えば、

■食べ物や食器
■人形や動物
■車や電車
■積み木
■箱
■布

などが使えます。
子どもが好きな物や、生活の中で見たことがある物を使うと、遊びやすくなります。

大人のまねをしないときは、どうすればよいですか?

何度もまねをさせようとせず、大人が楽しそうに遊んでみましょう。
その場ではまねをしなくても、あとで一人で試すことがあります。
「同じようにできたか」だけではなく、

■見た
■気づいた
■近づいた
■少し触った

という反応も大切です。

同じ遊びを何度もしていても大丈夫ですか?

同じ遊びをくり返すことには、子どもにとっての楽しさや安心感があります。
すぐにやめさせる必要はありません。
まずは大人も同じ遊びをして、その中に小さな変化を一つだけ入れてみましょう。

結いの虹が大切にしていること

私たち個別療育センター結いの虹では、ごっこ遊びができるかどうかだけで、お子さんを判断することはありません。
車を何度も走らせる姿にも、食べ物を一列に並べる姿にも、その子なりの楽しみや理由があります。
まずは、その子が見ている世界や、好きなことを知ることから始めます。

そして、JASPERの考え方を取り入れながら、子どもが楽しんでいる遊びに大人が加わります。

「JASPERとはどのような療育なのか」はこちら

その中で、

「この人と遊ぶと楽しい」
「自分のしたことに気づいてもらえた」
「新しい遊び方も少しおもしろい」

と感じられる経験を増やしていきます。
目標は、決められたごっこ遊びを上手にすることではありません。
子どもが自分の好きなことや考えたことを、人と一緒に楽しめるようになることを大切にしています。

結いの虹では、大阪市住吉区の長居教室、住之江区の住之江教室、阿倍野区の昭和町教室で、一人ひとりの遊び方やコミュニケーションに合わせた個別療育を行っています。

「結いの虹の支援プログラム」はこちら

まとめ

象徴遊びとは、物や動きを別の物や出来事に置きかえて楽しむ遊びです。
見立て遊びやごっこ遊びも、象徴遊びにふくまれます。

ごっこ遊びをしない、ごっこ遊びが広がらないからといって、急いで教えこむ必要はありません。
まずは、子どもが今どんな遊びを楽しんでいるのかを見ます。
その遊びに大人が加わり、新しい動きを一つだけ見せます。
子どもが楽しめなくなったら、元の遊びに戻ります。

大切なのは、ごっこ遊びを上手にすることだけではありません。

「一緒に遊ぶと楽しい」
「自分の気持ちが伝わった」
「自分の遊びを分かってもらえた」

と感じられる経験を重ねることです。
その経験が、遊びや言葉、人とのコミュニケーションが育つ土台になります。

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合同会社ファイブエス

代表 奥野伸一

児童発達支援管理責任者。個別療育センター結いの虹を運営。大阪市(住吉区・住之江区・阿倍野区)で発達に特性のある子どもたちへの個別療育に取り組んでいます。TEACCHプログラムやJASPER、インリアル・アプローチなどのエビデンスに基づいた支援を大切にし、子ども一人ひとりの強みを生かした関わりを重視しています。遊びや日常の関わりの中で「伝えたい」「一緒に楽しみたい」という気持ちを育み、親子が自分らしく笑いあえる時間を増やすことを目指しています。