- 結いの虹通信
「ことばがなかなか出ない」
「名前を呼んでも目が合いにくい」
「指差しが少ない」
「こちらの言っていることが伝わっているのか分かりにくい」
お子さんの発達を見守る中で、このような心配を感じる保護者の方は少なくありません。
特に、周りの子が少しずつ言葉で伝え始める時期になると、
「うちの子だけ遅れているのでは」
「早く言葉を出させないといけないのでは」
と不安になることもあると思います。
けれど、療育の中で大切にしたいのは、言葉が出ているかどうかだけを見ることではありません。
言葉になる前にも、子どもの中ではコミュニケーションの力が少しずつ育っています。
大阪市の個別療育センター結いの虹では、発語だけに注目するのではなく、子どもが「伝えたい」「見てほしい」「一緒に楽しみたい」と感じる気持ちや、やりとりの土台を大切にしています。
「言葉が出ない」と聞くと、どうしても発語そのものに目が向きやすくなります。
もちろん、言葉は大切なコミュニケーションの手段です。
自分の気持ちを伝えたり、困った時に助けを求めたり、好きなものを選んだりするために、言葉の育ちは大切です。
でも、コミュニケーションは言葉だけではありません。
たとえば、
・ほしい物の方を見る
・大人の手を引いて連れていく
・好きなおもちゃを持ってくる
・楽しい時に大人の顔を見る
・困った時に近くの人を見る
・声や表情で気持ちを表す
・同じ遊びをもう一度してほしそうにする
こうした姿も、子どもなりの「伝えたい」の表れです。
まだ言葉にはなっていなくても、子どもは体の動き、視線、表情、声、行動を使って、周りの人とつながろうとしていることがあります。
言葉が出る前の段階で大切なのは、子どもが「伝えると相手が分かってくれる」「人と関わると楽しい」と感じられる経験です。
たとえば、シャボン玉遊びで、シャボン玉がパチンと割れた瞬間に子どもが大人の顔を見ることがあります。
これは、単に目が合ったということだけではありません。
「今の見た?」
「おもしろかったね」
「もう一回したい」
そんな気持ちが、視線や表情の中に含まれていることがあります。
このようなやりとりを積み重ねることで、子どもは少しずつ「人に伝える」「人と共有する」経験を増やしていきます。
言葉は、その土台の上に育っていくものです。
保護者の方からは、
「指差しをしないのが気になります」
「目が合いにくいのですが大丈夫でしょうか」
という相談もよくあります。
この時も、指差しやアイコンタクトの有無だけで判断しないことが大切です。
見るポイントは、もう少し広くあります。
たとえば、
・好きなものに近づこうとするか
・困った時に誰かの近くに来るか
・楽しい遊びをもう一度求めるか
・大人の反応を少しでも気にしているか
・同じ場面で表情や声が変わるか
・人と一緒にいる時間が少しでも続くか
こうした姿の中に、コミュニケーションの芽が隠れていることがあります。
目が合う時間が短くても、必要な時にちらっと見る。
指差しはなくても、大人の手を引いて伝えようとする。
言葉はなくても、表情や声で気持ちを表す。
その子なりの伝え方を見つけることが、療育の大切な出発点になります。
言葉が少ない子どもに関わる時、大人はつい
「言ってごらん」
「これは何?」
「もう一回言って」
と促したくなることがあります。→発語が少ない子どもへの関わり方
もちろん、言葉を促す関わりが必要な場面もあります。
ただ、子どもにとってそのやりとりが負担になってしまうと、伝えること自体が楽しくなくなることがあります。
療育でまず大切にしたいのは、正しく言わせることよりも、
「伝えたら分かってもらえた」
「自分の行動で相手が応えてくれた」
「人とやりとりすると楽しい」
という経験です。
たとえば、子どもが欲しいおもちゃの方を見た時に、
「これが欲しかったんだね」
と気持ちを言葉にして返す。
子どもが大人の手を引いた時に、
「手伝ってほしかったんだね」
と意味づける。
子どもが楽しい場面でこちらを見た時に、
「おもしろかったね」
と一緒に喜ぶ。
こうした関わりが、子どもの「伝えたい」を育てていきます。
子どものコミュニケーションは、机に向かって練習する時間だけで育つわけではありません。
むしろ、遊びの中には、コミュニケーションが育つきっかけがたくさんあります。
たとえば、宝探し遊びでは、
・「どこ?」と探す
・見つけた物を大人に見せる
・「あった」と伝える
・分からない時に助けを求める
・ヒントをもらう
・見つけた喜びを共有する
といったやりとりが生まれます。
型はめやブロック遊びでも、
・できたことを見せる
・うまくいかない時に助けを求める
・大人のまねをする
・順番を待つ
・もう一回してほしいと伝える
など、さまざまなコミュニケーションの機会があります。
大切なのは、大人が一方的に教え込むことではなく、子どもが楽しいと感じる遊びの中で、自然に人とのやりとりが生まれるようにすることです。
結いの虹では、JASPERの考え方も大切にしています。→JASPERの考え方を取り入れた個別療育
JASPERは、遊びを通して、共同注意、象徴遊び、かかわり、自己調整などを育てる支援アプローチです。
難しく聞こえるかもしれませんが、保護者の方に分かりやすく言うと、
「一緒に見た」
「一緒に楽しんだ」
「もう一回したいと思えた」
「相手に伝えようとした」
という経験を、遊びの中で丁寧に積み重ねていく関わりです。
たとえば、子どもが車のおもちゃを走らせている時、大人が横から無理に別の遊びへ変えるのではなく、まず子どもの遊びに合わせます。
そして、子どもが見ているものを一緒に見たり、同じ動きをまねしたり、少しだけ遊びを広げたりします。
その中で、子どもが大人を見たり、反応を待ったり、もう一回を求めたりする瞬間が生まれます。
その小さな瞬間こそ、コミュニケーションの育ちです。
家庭でも、特別な教材を用意しなくてもできることがあります。
大切なのは、子どもを急がせることではなく、子どもの伝え方に気づくことです。
たとえば、
子どもが何かを見ていたら、
「車だね」
「赤いね」
「走ったね」
と、子どもが見ている世界に言葉を添えます。
子どもが大人の手を引いたら、
「開けてほしいんだね」
「手伝ってほしいんだね」
と、行動の意味を言葉にします。
子どもが楽しい表情をしたら、
「楽しいね」
「もう一回しようか」
と、気持ちを共有します。
ここで大切なのは、すぐに言葉を言わせようとしすぎないことです。
まずは、子どもが安心して伝えられる関係をつくること。
その中で、言葉、声、視線、表情、身振りなど、その子に合った伝え方が少しずつ育っていきます。
子どもの発達を見る時、
「まだ話せない」
「指差しがない」
「目が合わない」
と、できていない部分に目が向きやすくなります。
でも、療育では、できていないことだけを見るのではなく、
「今、どんな形で伝えようとしているか」
「どんな場面なら人と関わりやすいか」
「どんな遊びなら表情が動くか」
「どんな関わりなら安心できるか」
を見ていきます。
子どもの中にある小さなサインを見つけることが、支援の第一歩です。
そのサインに大人が気づき、受け止め、返していくことで、子どもは
「伝えていいんだ」
「分かってもらえるんだ」
「人と関わるのは楽しいんだ」
と感じられるようになります。
言葉が出ない、発語が少ない、指差しが少ない、目が合いにくい。
こうした姿があると、保護者の方は不安になると思います。
でも、言葉がまだ出ていないからといって、何も育っていないわけではありません。
子どもの中には、その子なりの「伝えたい気持ち」があります。
その気持ちを見つけ、育てていくことが、療育で大切にしたい視点です。
大阪市の個別療育センター結いの虹では、発語だけに注目するのではなく、遊びや日常の関わりの中で、子どものコミュニケーションの土台を丁寧に見ていきます。
「言葉が出ないことが気になる」
「子どもの伝え方をどう受け止めればよいか分からない」
「大阪市で個別療育を探している」
そのような方は、まずはお子さんの今の姿を一緒に見つめるところから始めてみてください。
→個別療育ではどのような支援をするのか
子どもの小さなサインに気づくことが、コミュニケーションを育てる大切な一歩になります。